藍澤和孝建築設計事務所　Kazutaka Aizawa Architects　

築30年を超えたマンションの712号室を、家族4人のためにリノベーションする計画である。

施主はフルリノベーションを前提に都内数十件の中古マンションを内覧してきた。

施主が一番にこだわっていた「角部屋」という条件のこの部屋が、南北西の開口部の向こうに広がる豊かな空間をもつことが購入の決め手となった。

南側は丘になった公園の緑地が目の前に広がり、北側は隣棟に囲まれた中庭となっており少しのプライベート性をもつ静かな外部空間、西側は低層の大型店舗が建っているので視界がどこまでも抜けている。

この条件を家族みんなが常に感じることができ、自然光が広がる明るい空間が望まれた。

まず、スケルトンになった空間に水回りと寝室のプライベート性が高い3つのボリューム同士を離して配置した。

ボリュームで削り取られた後の空間が、3面開口部の豊かな空間に囲まれた家族のパブリック空間となる。

パブリック空間が削りとられたくびれを持つことで、家族同士の様々な距離感を生み出すことができる。

一般的なnLDKのマンションでは、住戸内の暗い中廊下が家族のパブリックとプライベートの間に存在し、家族間の距離を分断するかのように存在する。

しかし、本計画のように廊下がなくパブリックとプライベートが隣り合った方が、家族間でおおらかな距離感を達成しているように感じた。

​この家族がいつまでもお互いの距離感を尊重して生活していき、穏やかな時間が過ごせることを願っている。

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